GPUの入替え・増設におけるチェックポイント

昨今のAI需要が高まってきたことにより、手持ちの本体にGPUを搭載したり入替えを行ってAIモデル開発を試してみたい、といったお問い合わせをいただくケースが増えてきました。そこで、本ページではGPUの入替えや増設を検討する場合のチェックポイントをご紹介いたします。

GPUを搭載するための物理スペース

昨今のGPUは大型の冷却クーラーを搭載したモデルが増えています。そのため、新たに購入したハイスペックなGPUが、マシン本体上の別パーツと物理的に干渉して取り付けられない…といった悲しい事例もあります。

そのため、GPUの入替え/増設の検討においては、まず最初に物理スペースの確認と確保が重要です。
GPUのサイズは必ずメーカーサイトなどに記載されていますので、交換予定のGPUの情報を調べ、長さをベースに奥行(ケースの横幅を超えないか) や高さ (拡張スロットを何スロット専有するのか) を確認します。

筐体内部におけるパーツ同士の物理的な干渉

また、理論上の物理スペース以外で注意すべき点がいくつかあります。
大型のGPUではカードの後ろにバックプレートがついている場合があり、稀に別のパーツと干渉してしまうことがあります。

バックプレート以外でも、GPUに占有されるエリアでPCI-E拡張スロットよりも高さのある部品が設置されている場合、その部品と干渉してしまうことがあります。S-ATAコネクタやUSBコネクタなどが基板に対して垂直に差し込む様に実装されているカードは、該当のコネクタがGPUで塞がれてしまい利用できなくなる場合があります。

※OK例:これ以上大型のクーラーの場合は赤〇のコネクタ付近が干渉する可能性があります。

※奥行きの長いGPUのイメージ:マザーボード上のコネクタにGPUがかかると、コネクタを利用できない場合があります。

・GPUクーラーのでっぱり

例えば3スロットの拡張ブラケットを消費するタイプのGPUであっても、実際のクーラー部分が3スロット分の幅より若干厚くなっている場合があります。
そのため、物理サイズの下面ギリギリで検討してしまうと該当部分が干渉してしまう可能性があります。

電源関係

GPUやCPUなど、高性能パーツの消費電力に合わせた電源容量を選択することが大切

昨今のGPUは高性能なものほど消費電力が高くなる傾向があります。
そのため、利用予定のGPUの消費電力に対して十分に余裕がある電源容量であることが重要です。
特に高性能なCPUや大容量のメモリや高速なFANなどを使っている場合は、そういった各パーツに必要な電力を計算した上で、追加でGPUを動作させるために十分な容量があるかも重要です。

GPU用の電源コネクタにも種類がある

また、以前はGPU用の電源としては8pin (6pin) タイプのコネクタが主流でしたが、2023年の新型からは高性能なGPUは12VHPWRコネクタが主流となりました。


現状は既存の8pinからの変換ケーブルも用意されていますが、規格上12VHPWRは600Wまで対応する規格であるため、以前の8pin (150W) のコネクタを最大4本要求されることがあります。


※写真のケーブルはRTX4090用の450Wまで対応変換ケーブルになります。
容量の少ない電源ユニットでは8pinが4本ない場合があるため、事前に本体側の電源ケーブルをご確認ください。
HDDやSSDなどに使う電源ケーブルから8pinへの変換アダプタなどが出回っていますが、かなり大容量の電流が流れるため、状況によっては発煙・発火の可能性がありますので、弊社では使用しないことを推奨しています。

電源変換ケーブルの品質がコネクタ発火につながるケースも

同様に、8pinから12VHPWRへの変換ケーブルも品質が悪い場合に発火の原因になるという情報があります。そのため、電源ケーブルがモジュール方式である場合、電源メーカーで12VHPWR用のケーブルが出ている場合は該当ケーブルもセットで交換することをお勧めします。

その他、12VHPWRコネクタが出始めのころは、コネクタの差し込みが甘いさが原因と思われるコネクタ発火の事例が報告されています。
同様の事故を防止するため、コネクタへの差し込みを確実に行いましょう。また、差し込んだケーブルをいきなり曲げすぎることによるトラブルを避けるために、ケーブルの取り回しにも十分に気を付ける必要があります。

PC本体に接続するコンセントにも注意が必要

外部要因として、GPUを搭載・アップグレードすることでPC本体の消費電力が上昇することによるトラブルも考えられます。
消費電力が高い状態で、給電に使うコンセントをたこ足配線などにしていると電力不足によるトラブルが発生しやすくなります。こうしたトラブルを防ぐため、事前に電源をとるコンセントの見直しも検討が必要となります。

冷却関係

GPUの冷却にはパッシブタイプとアクティブタイプがある

高性能なGPUほど消費電力が高いため、カードが発する発熱量も増大してきております。そのため、搭載後の冷却に配慮する必要があります。
現在のGPUは大きくわけて、冷却がパッシブタイプと呼ばれるGPU専用設計のサーバーでしか利用できないFANがないタイプとアクティブタイプと呼ばれる、カード自身に冷却FANが搭載されているタイプに分かれます。
ここでは、後者のアクティブタイプを前提としたご説明となります。

アクティブタイプを使用する上での注意点

アクティブタイプのGPUは外排気クーラーと内排気クーラーと2種類に分けられます。 (特殊な仕様として水冷クーラーもありますが、こちらは理屈上ではラジエターへ熱を移動して外部に排気するため外排気と考えられます)

外排気クーラータイプのGPUの多くは、ブロアタイプFANが1つ搭載されています。現在のNVIDIA RTXシリーズ (旧Quadroシリーズ) は、ほぼ外排気クーラー仕様です。

内排気クーラータイプのGPUの例としては、一般的に販売されているGeforce系のGPUは一部を除くほとんどが該当します。

冷却関係で特に注意が必要なのは内排気クーラータイプです。
この仕様はGPUを冷却した後の熱くなった排気をケース内部へ排熱します。そのため、PCケース内の熱をしっかりと排熱処理できていないと、ケース内のGPUやCPUの冷却に内排気クーラーから排熱された熱い空気を使ってしまう、熱のショートサーキットが発生してしまいます。

適切な冷却がPC本体の寿命に影響することも

一般的にマザーボードなどに利用されているコンデンサーなどは動作時の温度により寿命が大きく変わります。
そのため、内排気クーラーで適切に排気が行われない場合は、PC本体の寿命などに影響が出る可能性があります。

上記点を考えると、内排気クーラーのメリットがないように見えますが、クーラーの大型化やFANの数を増やす事で低回転のFANで冷却をかけやすくなるためゲーム用途の瞬間的なオーバークロックへの対応や動作音を抑えやすいというメリットがあります。

拡張スロットの種類

現在のアクティブタイプGPUはほぼPCI-E x16スロットへの取り付けが前提となります。
そのため、増設を検討される方は、取り付けるマシンにPCI-E x16スロットの空きがあるかを確認する必要があります。

物理的なバス形状は x16でも、内部の信号線は異なる場合がある

また、PCI-Eスロットは動作速度がx〇として表記されます。x16は最大のタイプとなりますが一部のPCでは物理的なバス形状はx16であっても、内部の信号線がx8以下で動作するタイプもあります。
このタイプの拡張スロットは、マザーボードとの通信速度が半減します。そのため動作速度に影響が出る場合がありますので注意が必要です。

PCI-Eの世代による速度差も

PCI-Eスロットには、いくつかの世代がいくつが存在します。2023年現在ではGen5世代が最新で、それぞれの世代間で速度が倍増しています。世代が異なっても互換性はありますが、GPUよりもマザーボード側が前世代の場合は多少速度に影響が出る場合があります。
現状では、体感できるレベルで速度が変わることはありませんが、一部複数世代のPCI-Eスロットを搭載するマザーボードもありますので、可能な限りGPU側と同等以上の世代のスロットを使うことが望ましいです。

その他

筐体背面のカードスロット形状によっては、ディスプレイの出力ポートに干渉することがある

発生頻度は低いですが、複数の拡張スロットを利用するカードを多数搭載したため、ディスプレイ出力用のポートがケースと干渉する事例があります。事前に本体リア側のスロット形状などに問題がないか確認することをお勧めします。

大型GPUの重量を支えるための配慮も重要なポイント

大型のGPUはかなり重量があるため、スロットの取り付けだけではGPU本体を支えられない事があります。
昨今はこういったGPUを支えるためのGPUステーもオプションで用意されていますので、大型のGPUの場合は併用をお勧めします。

ワークステーションのGPU増設/入替えのご相談はお気軽に!

研究用・産業用PCの製作・販売サービス TEGSYS – テグシス

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