RAIDボリュームと読み込み/書き込み速度のパフォーマンス検証
TEGSYSサイト内における技術記事「RAIDとは? ストレージ構成検討のポイント」では、コンピュータのストレージ構成におけるRAIDの概要について解説しました。
本記事では、記事内で解説したRAIDボリュームを実際に構成し、その挙動について確認していきます。
環境
未使用新品の1TB SSD S-ATAを用い、様々なRAIDボリュームを構成したうえ、そのパフォーマンスを測定しました。
ストレージの物理的な構成とRAIDレベルは下記のとおりです。
RAIDレベル | 用意したストレージの種類と数 |
RAIDなし | 1TB SSD S-ATA x1 |
RAID0 | 1TB SSD S-ATA x2 |
RAID1 | 1TB SSD S-ATA x2 |
RAID5 | 1TB SSD S-ATA x3 |
RAID6 | 1TB SSD S-ATA x4 |
RAID5 | 1TB SSD S-ATA x4 |
RAID0 | 1TB SSD S-ATA x4 |
検証
RAIDの構成にはハードウェアRAIDカードBroadcom MegaRAID SAS9361-4iを用い、SSDはすべてこのカードの配下に接続します。
また、測定にはHDD・SSDベンチマークソフトソフトウェアCrystal DiskMark 8.0.5を利用しました。
データサイズを1GBに設定し、5回試行した結果を取得します。
・Crystal DiskMarkとは HDD、SSD、USBメモリなどのストレージデバイスの読み書き速度を測定するWindows用のフリーソフトウェア。シーケンシャルなデータ転送とランダムなデータアクセスの両方の速度をテストし、デバイスのパフォーマンス評価を行うことができる。使いやすいインターフェースが魅力。
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結果
それぞれの環境でCrystal DiskMarkを実施した結果、読み込み/書き込みの速度は以下のようになりました。
3本以上のデバイスで構成した場合、シーケンシャルリードSeq1M Q8T1の値が単体のSSDの性能を台数で加算した以上のパフォーマンスが計測され、実態とやや乖離があるように思われました。
そのため、3本以上のデバイス構成ではSeq1M Q1T1の値も併記しています。
1TB SSD S-ATA x1 (noRAID)
R:読み込み | W:書き込み | |
Seq:シーケンシャルアクセス (Seq1M Q8T1) | R564.95MB/s | W529.17MB/s |
RND:ランダムアクセス (RND4KQ1T) | R48.45MB/s | W108.97MB/s |
1TB SSD S-ATA x2 (RAID0)
R:読み込み | W:書き込み | |
Seq:シーケンシャルアクセス (Seq1M Q8T1) | R1116.34MB/s | W1038.75MB/s |
RND:ランダムアクセス (RND4KQ1T) | R48.69MB/s | W109.58MB/s |
1TB SSD S-ATA x2 (RAID1)
R:読み込み | W:書き込み | |
Seq:シーケンシャルアクセス (Seq1M Q8T1) | R1118.23MB/s | W529.37MB/s |
RND:ランダムアクセス (RND4KQ1T) | R48.18MB/s | W103.18MB/s |
1TB SSD S-ATA x3 (RAID5)
R:読み込み | W:書き込み | |
Seq:シーケンシャルアクセス (Seq1M Q8T1) | R2578.90MB/s | W1057.08MB/s |
Seq:シーケンシャルアクセス (Seq1M Q1T1) | R1589.78MB/s | W410.39MB/s |
RND:ランダムアクセス (RND4KQ1T) | R71.08MB/s | W32.65MB/s |
1TB SSD S-ATA x4 (RAID6)
R:読み込み | W:書き込み | |
Seq:シーケンシャルアクセス (Seq1M Q8T1) | R2854.93MB/s | W1055.74MB/s |
Seq:シーケンシャルアクセス (Seq1M Q1T1) | R1381.36MB/s | W406.60MB/s |
RND:ランダムアクセス (RND4KQ1T) | R63.62MB/s | W28.77MB/s |
1TB SSD S-ATA x4 (RAID5)
R:読み込み | W:書き込み | |
Seq:シーケンシャルアクセス (Seq1M Q8T1) | R3406.11MB/s | W1581.06MB/s |
Seq:シーケンシャルアクセス (Seq1M Q1T1) | R2549.93MB/s | W332.83MB/s |
RND:ランダムアクセス (RND4KQ1T) | R75.39MB/s | W23.18MB/s |
1TB SSD S-ATA x4 (RAID0)
R:読み込み | W:書き込み | |
Seq:シーケンシャルアクセス (Seq1M Q8T1) | R2229.00MB/s | W2072.22MB/s |
Seq:シーケンシャルアクセス (Seq1M Q1T1) | R2001.37MB/s | W1890.70MB/s |
RND:ランダムアクセス (RND4KQ1T) | R48.64MB/s | 108.53MB/s |
考察
アクセス速度の向上を目的として利用されるRAID0以外のRAIDレベルでも、ストレージを単体で利用した場合と比較して一定程度のアクセス性能の向上が期待できることが分かります。
しかし、これはひとまとまりの相対的に大きなデータを転送する際に重要になるシーケンシャルアクセス性能に関してです。
多数の小さなサイズのデータに連続的にアクセスする際に重要なランダムアクセス性能は、RAIDの構築では効果的に引き上げることができないことがこの結果から推測されます。
テストした中で仕組み上最もアクセス性能を重視しているはずの1TB SSD S-ATA x4 (RAID0) はSSD本数ほどの効果はこの結果からは読み取ることができません。
1TB SSD S-ATA x2 (RAID0) と比較すれば2倍近いシーケンシャルアクセス性能を残していますが、全く冗長性のないストレージ構成であることを考慮すると、積極的に採用するべき場面は限定的と言えます。
また、RAID5、6ではランダムリード性能に大きな落ち込みが見られます。
これは冗長性を確保するためのパリティデータの処理によるオーバーヘッドの影響が推察され、仕様上の短所の影響を見て取ることができます。
まとめ
今回は一般的に利用されるRAIDボリュームにおけるパフォーマンスに着目し、検証を行いました。
基本的にはどのレベルでもストレージデバイスを1本で利用する場合に対して、極端な性能の低下は見られませんでした。
RAIDはRAID0を除き、通常はシステムの信頼性を確保するための仕組みですが、各RAIDレベルにどのようなパフォーマンス上の傾向があるのか、ご参考になりますと幸いです。
※注記 なお、今回S-ATA SSD用い上記の結果を得ましたが、このアクセス性能は、今日の一般的なNVMe対応SSDであれば十分に達成できる値です。NVMe SSDも普及が進み、現在ではコストパフォーマンスに優れた製品も展開されています。 |
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